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血液型診断―栗の節句 [番外編「~縁」(短編小説集)]

短編小説集「縁」番外編・5作目アップ。

今回のお話は・・・やっとハートフルほのぼの幸せ系です。
若夫婦のお話で、彼らは本編「縁」の主人公・主要人物でもあります。とりあえず今回は番外編で先取り。

血液型について、そして重陽の節句についての情報も入ったネタ的なお話。3000字なのでサクっと軽く読めます。

ちなみに物語中に出てくる重陽の節句(別名、栗の節句)は旧暦9月9日は・・・今年の新暦では10月9日になります。

それはさておき・・・

今までの4作品は『生きづらい世の中、どう折り合いをつけて生きていけばいいのか、劣等感をどう飼いならせばいいのか』という少々重いテーマでしたが・・・この夫婦も実は周囲となじめないところがあり、それはいずれ本編で明かされます。

そんなわけで、過去4作品もよろしく。

「蝉―僕のランク」http://hayashi-monogatari.blog.so-net.ne.jp/2016-09-05
※あらすじ→学校で下位ランクの『僕』、最下層女子『長山春香』に何を思う。
学園もの、うむ、ちょい辛め、シリアスで重いけど救いはあるのじゃ。(5250字)

「あだ名―中秋の名月」http://hayashi-monogatari.blog.so-net.ne.jp/2016-09-14-3
※あらすじ→白井月子が自分のランクを守るために犠牲にしたのは・・・
テーマはイジメ。己の容姿に劣等感を抱える月子が犯した罪とは。(6200字)

「豚草―腐女子の誇り」http://hayashi-monogatari.blog.so-net.ne.jp/2016-09-19
※あらすじ→中学時代、下位ランクだった長山春香、白井月子、そしてもう一人「モヤシ」こと八島麗華の話。彼女は、長山春香を犠牲にした中学時代をどう想い、今、どうしているのか。(4450字)

「お彼岸―アラフォー女子の幸せ」http://hayashi-monogatari.blog.so-net.ne.jp/2016-09-24-1
※あらすじ→恋愛や結婚を一歩引いて見ている冷静な未婚アラフォー女子が主人公。果たして彼女は勝ち組なのか負け組なのか。お彼岸のプチ知識など情報も入った軽く読める物語です。(4000字)

では5作目「血液型診断―栗の節句」、以下本文。

   ・・・

 高く晴れ渡った空が心地よい中秋の休日。
 四条静也・理沙の若夫婦はまったりと自宅マンションで過ごす。

 二人は中学時代からの同級生で、今は高卒公務員として○○市役所にお勤めしている。
 結婚して一年。
 しかもまだ21歳だ。
 ――若すぎる二人の結婚に周囲は驚いたが、それはまた別の話。

 昼食を済ませ、居間でゴロゴロしていた静也に、理沙は何となしに語りかけてきた。

「ねえ、静也って血液型はたしかAだったよね」
「ん、そうだけど」

 体を起こした静也は理沙を見やる。

 理沙は図書館から借りてきた『これが真実! 新・血液型診断』という本に目をやりながら、「なるほどね」と一人で納得していた。

 やれやれ、女はああいったの好きだよな。
 ちょっと辟易気分を抱え、静也は心の中でつぶやく。

 そもそも4種しかない血液型で人間の性質を分けるなんてナンセンス。
 けど、さすがにそんなことを口にする愚は犯さない。正直さは時に諍いのもとになる。
 夫婦円満こそ幸せなる家庭の基本。

 それに、理沙が世の中に4種類の人間しかいないと信じたところで、静也には痛くもかゆくもない。
 はっきり言ってどうでもいいことである。
 下らないことで理沙の機嫌を損ねることのほうがずっとマイナスだ。
 ここは黙って理沙に同調しておくに限る。

 ――と損得勘定ではじき出し、適当に理沙のおしゃべりを聞き流していた静也であるが、だんだん興味が湧いてきた。
 この血液型診断、意外と科学的なアプローチもある話のようだ。

「A型って、もともとは農耕民族由来だったらしいわよ。Bは遊牧民族。農耕と遊牧じゃ生活スタイルが違うから、相性が合わないって」

「そういえば、黒野先輩はBだよな」

「ああ、いかにも遊牧民族系よね」

 黒野先輩というのは、同じ職場に勤める静也の同僚で、静也と同じく広報課に所属しており、男性ホルモンが過剰に分泌されているのではないかと思うほどのマッチョな肉体を持つ暑苦しい男だ。

 そんな先輩は、お酒も合コンも大好きな肉食系。
 少々ウザイところもあるが、明るくて自由奔放。
 確かに行動的で遊牧民的な気質を持っている。

「とするとAB型は? 農耕と遊牧の掛け合わせってことか」
「みたいね。進化の過程で、新しく生まれてきた血液型なんですって」

「合わないもの同士の掛け合わせか」
「だから性格が複雑なのかも」
「なるほどな」

 慎重派で冒険はあまり好まず、安定を求める農耕型の草食系・静也的な性格と――
 計画性があまりなく自由奔放でドラマティックを求める遊牧型の肉食系・黒野先輩的な性格が同居していると考えれば、そのややこしさはなかなかのものであろう。

「ええっと、理沙はO型だったっけ」

 当然、静也は理沙の血液型のことも気になった。

「うん。O型は一番、古くからある血液型のようよ。病に打ち勝ちながら長い歴史の中、生き残ってきたということで免疫力が強いんですって」

 理沙はニカっと笑い胸を張る。

 それを聞いた静也はホッとした。
「そうか、ならば理沙は健康に長生きできる可能性が高いってことだよな」

 やっぱり、理沙に先に逝かれるのはイヤだった。もちろん、自分だってそこそこ長生きしたいけど、理沙より長生きしたいとは思わない。

 その時、ふと思い出す。
 健康で長生き……といえば――

「そろそろ重陽の節句だな」

 旧暦の9月9日は重陽と呼ばれ、江戸時代に定められた五節句の一つである。

 今ならば新暦10月中頃にあたり、栗の旬、菊の季節でもあることから、別名、栗の節句または菊の節句ともいう。

 昔、菊は薬草としても用いられ、長寿を願う植物とされてきたことから、重陽の節句は不老長寿を願う行事でもあった。

 節句とは、季節の節目に無病息災・子孫繁栄・豊作を願い、供え物をし邪気を祓う行事のことで――由来は古代中国の風習文化である。

 その古代中国では、奇数は縁起の良い『陽数』とされ、奇数の中でも一番大きな陽数が『9』であり、その9が重なるということで、9月9日を重陽と呼び、めでたい特別な日となったのだ。

「栗の節句ということで、さっそく栗祭りといきますか~っ」

 理沙にとっては嬉しい栗の節句、すなわち栗を使った食べ物をお腹に収める日としてインプットしてある。

「栗饅頭に栗羊羹、モンブランにマロングラッセとあるけど、やっぱり日持ちしないモンブランよねえ」

 いそいそと立ち上がった理沙はお茶の用意をする。

「いや、まだ重陽の節句じゃないだろ。ええっと旧暦9月9日は明日じゃなかったっけ」

「硬いこと言わない、言わない。適当でいこうよ。そういうとこA型だよねえ」

 O型気質の理沙は、自分に都合の良いところだけおおらかである。そこはB型の黒野先輩にも通じる。
 重陽の節句に因んで栗系のお菓子をすでに用意していたようだ。

 さらに付け足すならば、新暦の9月9日にもしっかりと重陽の節句を祝い、栗のお菓子を食べまくった理沙であった。

「甘いものを食べすぎると健康に良くないぞ。血管もボロボロになるし、塩分と同じく害になるんだぞ」

 そう注意するものの、理沙の耳には入らない。

「栗は栄養にいいのよ~」

 いや、理沙には「太るぞ」という言葉が効くのだが、そこはあえて言わないでおく。
 本当に健康を害するほどの肥満体であれば注意するけど、今のところ理沙は中肉中背で平均的。膝から太ももにかけて、ムッチリと肉がついているくらいだ。
 内臓に脂肪がつくのは良くないが、皮下脂肪であれば健康には問題はない。

 と論理的かつ科学的に判断する静也であるが、実はムッチリした理沙の太ももが大好きでもある。
 たまに膝枕で耳掃除なんぞもしてもらっている。

 そんなこんなで、紅茶をお供にモンブランを幸せそうに口に運ぶ理沙を見やり、静也もつきあう。

 めでたい栗の節句、少々の糖分の取り過ぎは仕方ないかと大目に見ることにした。
 いや、まだ重陽の節句じゃないんだけど。

「……ま、適当でいいか」

 A型気質の静也も理沙にひっぱられ、適当に楽しむことにした。

 口の中に広がるモンブランの栗の香ばしさと甘さ。脳内の幸せホルモンが分泌される。
 そう、こういった暮らしが長生きの秘訣かも。

「これ食べたら、図書館に行こうか。この本、返したいし」
「そうだな」

 図書館までの道はいい散歩となる。
 日はすっかり短くなり、昼下がりの頃になると日差しにはどこか黄昏た色が混じり、家々や葉を落としつつある木々をやさしく照らし、長い影を作る。

 明日も仕事は休みだから寝坊ができる。
 秋の夜長は読書で過ごすか。

 夫婦水入らず。旧暦の重陽の節句が近い秋の日、お互いの健康長寿を願った。


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